一般社団法人の社員とは|その役割と責任について

社員とは?

一般社団法人の「社員」と会社の「従業員」とは大きく異なります。

単なる呼び名ではなく、ルール(定款)によって定められており、しっかりと役割があります。

このことを誤解されている方が多いですが、一般社団法人において重要なことなので、以下で詳しく見ていきましょう。

社員の意味

 「社員」という言葉で誤解をされる方がいます。

一般的に「社員」というと、職員や従業員をイメージされる方が多いでしょう。

しかし、一般社団法人でいう「社員」とは、総会で議決権を有する会員のことをさします。

株式会社で言う「株主」の方がイメージ的に近いかもしれません。

「正会員」という呼ばれ方をすることもあります。

社員の条件

 一般社団法人は、2名以上の設立時社員が定款を作成するため、定款には設立時社員の住所・氏名または名称が記載されています。

一般社団法人を設立するには、その社員になろうとする者(以下「設立時社員」という。)が、共同して定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第10条より)

設立時社員は、個人だけでなく法人でも可能です。

株式会社の経営者が新規事業の立上げに際して、一般社団法人の設立を検討されるご相談があります。

この場合、経営者の株式会社と経営者ご本人で社員2名とカウントすることで、要件を満たします。

その場合、定款認証の際に公証役場で株式会社の事業目的と整合性が取れているかを見られますので、「株式会社の定款の事業目的を達成するために、一般社団法人を設立する」というストーリーが成り立っているか注意して確認してみてください。

一般社団法人の社員になるために、とくに法律で資格や条件が決められているなどの制限はありません。

社員になるための条件や社員の立場を失ってしまう条件は、各法人が定款で決めることができます。

これを、「社員の資格の得喪に関する規定」といい、定款に必ず書かなければならない絶対的記載事項の一つです。

定款の絶対的記載事項についてはこちら

その一般社団法人の社員であり得る条件は、一般社団法人を設立する目的に特に規制がない以上、様々なものが考えられますが、例えば、

・○○大学出身者限定
・○○県出身かつアメリカ合衆国永住者限定
・アロマセラピーの資格を持つ人限定
・東京都内で社労士事務所を営む社労士限定

のような、法人の性質や設立目的に会った規定が考えられるでしょう。

条件以外にも、「社員になる方法」や「代表理事の承認を要する」と定款に定めておくことも可能です。

株式会社の株主との違い

一般社団法人の社員は、株式会社の株主に当たるような存在とお話しましたが、一つ大きな違いがあります。

それは、社員に対して利益の分配ができないという点です。

株式会社の場合、株主に対して配当があります。

一方、一般社団法人では、社員に対する剰余金の分配はできませんし、社員総会の場で剰余金の分配について話し合うこともできません。

そのため、社員になったとしても、それに対する報酬は受け取ることが出来ません。

設立時社員の役割

設立時社員は、設立時理事を決める役割があります。

第十五条 定款で設立時理事を定めなかったときは、設立時社員は、第十三条の公証人の認証の後遅滞なく、設立時理事を選任しなければならない。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律より)
第十七条 設立時役員等の選任は、設立時社員の議決権の過半数をもって決定する。
2 前項の場合には、設立時社員は、各一個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律より)

原則は、一人一票です。

また、設立時理事を解任することもできます。

(設立時役員等の解任)
第十八条 設立時社員は、一般社団法人の成立の時までの間、設立時役員等を解任することができる。
(設立時役員等の解任の方法)
第十九条 設立時役員等の解任は、設立時社員の議決権の過半数(設立時監事を解任する場合にあっては、三分の二以上に当たる多数)をもって決定する。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律より)

設立時社員の責任

設立時社員は、下記の場面で損害賠償責任を負うと法律で明記されています。

  • 任務を怠ったとき
  • 職務を行うについて悪意又は重大な過失があったことにより、第三者に生じた損害があったとき

こういった場面はレアケースかと思いますが、一応頭の片隅に置いといてください。

また、

(一般社団法人不成立の場合の責任)
第二十六条 一般社団法人が成立しなかったときは、設立時社員は、連帯して、一般社団法人の設立に関してした行為についてその責任を負い、一般社団法人の設立に関して支出した費用を負担する。

ことになっています。

 

社員名簿

 一般社団法人は社員名簿を作成し、主たる事務所に備え置く必要があります。

社員の氏名または名称・住所を記載したもので、電磁的方法(パソコンのファイルなど)でも作成することができます。

社員は正当な理由があれば、一般社団法人の業務時間内に社員名簿の閲覧や謄写を請求することができます。

個人情報保護の観点から、プライバシーに関することは閲覧対象外です。

社員の権利

 一般社団法人の社員には、社員総会の議決権以外にも、役員への責任追及や設立の取消、社員総会決議の取消などの権利を有します。

設立時には2名以上の社員が必要ですが、人数さえいればと簡単に社員を決めるのはおすすめしません。

設立後の運営をスムーズにするために、社員の人選は慎重に行ってください。

 

退任・変更

 社員の退会や変更については、別途その条件や手続きを定款で決めることになります。

例えば会員制度を設けた場合、会員に入会金や会費の支払いを求めることができますが「定められた期間以上、会費を支払わない会員は社員資格を喪失する」と定款に定めることも可能です。

退会には「任意」「法定」「除名」の3種類があります。

<任意>

社員を辞めるときは任意に辞められるようになっています。

(任意退社)
第二十八条 社員は、いつでも退社することができる。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
2 前項ただし書の規定による定款の定めがある場合であっても、やむを得ない事由があるときは、社員は、いつでも退社することができる。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律より)

よく、任意でいつでも辞めれるようにはしたくないと言われる方がいます。

ということで、定款で制限をかけようとされますが、多くの場合は公証役場から、こちらの条文を根拠に制限が認められないことが多いです。

原則は任意退社ですので、そこに制限をかける合理的な理由が必要になります。

<法定>

法律が定めている事由によって、社員の意思にかかわらず自動的に退会することで、以下のようなものがあります。

①定款で定めた事由の発生
②総社員の同意
③死亡又は解散
④除名

 

<除名>

本人の意思に反していても、社員総会の特別決議を経れば除名処分とすることができます。

ただし、その社員に対して社員総会の1週間前までに通知し、総会で弁明の機会を与えなければいけません。

尚、新しい人が社員になり入会しても役所などに届け出る必要はなく、社員名簿などで管理できていればOKです。

 

社員のリスク

私がサポートしてきた中でよく質問されるのは、「社員になった場合、リスクはないのか」ということです。

社員は、会費を支払う義務があります。

その対価として、社員総会の議決権を得るようなイメージです。

法律でも以下のような定めがあります。

(経費の負担)
第二十七条 社員は、定款で定めるところにより、一般社団法人に対し、経費を支払う義務を負う。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律より)

社員になるリスクとして考えられるのは、その法人が解散すれば、せっかく期待して会費を払ったのに…というくらいかと思います。(もちろん、その法人の運営方法にもよります)